もし炭治郎が、日の呼吸の適性が最適最強だったら その14

前話はこちらです。

shiryuブログ

ライトノベル作家のshiryuです。鬼滅の刃のSSを書きました。タイトル通り、炭治郎がもしも最初から最強だったらという話…

 


 

 鬼殺隊の最強の称号を持つ、日柱の竈門炭治郎が……鬼だった。

 

 まさかそんな訳がないと思って問いかけたが……肯定されるとは、思ってもみなかった。

 

「う、嘘でしょ……!?」

「……ううん、本当だよ」

 

 炭治郎は悲しそうな顔で、寂しそうな音を立てながら、そう言い切った。

 その言葉を言った時に、嘘の音は聞こえてこなかった。

 

 つまり、本当に……鬼なんだ。

 

 いつもの俺なら、「イヤァァァ!!」とでも、「ギャァァァ!!」とでも叫んでいたかもしれないが……。

 

 それをするにはあまりにも、炭治郎が鬼には見えなかった。

 

 たとえ炭治郎が、「自分は鬼だ」と言って、本当のことを言っているのだとしても、そうは見えない。

 

 だってさっきの鬼とは、明らかに違う。

 何もかも、容姿も、優しさも、音も。

 

 何もかもが違って、炭治郎は、普通の人に見える。

 

 ……まあ、普通の人が鬼殺隊の柱になんて絶対になれないと思うけど!

 

「そ、その、なんで炭治郎は、鬼なんだ……? というか、本当に鬼なの?」

「ああ、そうだよ。容姿も擬態してて、ツノはないけど犬歯が鋭くて、目も赤いんだ」

 

 そう言って炭治郎は1度目を瞑り、開けると目が黒から赤に変わっていた。

 少し瞳孔も普通の人よりも縦長になっている。

 

 炭治郎が「いー」という言いながら口を横に広げ、犬歯が鋭くなっているのを見せてくる。

 なんか……犬みたいで可愛い、と場違いながら思ってしまった。

 

「本当に、鬼なんだ……だけど炭治郎、鬼っぽくないよね? あれ、というか鬼だったら、日の光浴びたら死ぬんじゃないの? 昼の時、普通に日の光浴びてたよね?」

「うーん、どこから話せばいいかな……」

 

 困ったように少し笑いながら、炭治郎は1度周りを見渡した。

 

「とりあえず、山を下りようか。ここだとまた鬼が来るかもしれないから」

「わ、わかった……」

 

 そして俺は炭治郎に案内されながら、山を下りた。

 

 ここは日柱の炭治郎が見回りをしていた地域らしくて、俺が鬼に襲われているのを見つけて助けてくれたらしい。

 

 やっぱり、炭治郎は……鬼かもしれないけど、鬼じゃない。

 

 俺達は山を下りて、一軒のお店に入った。

 ここは入り口に藤の花の家紋があって、昔に鬼に襲われていたところを鬼殺隊に助けてもらい、それからこの家紋を掲げて、無償で尽くしてくれているらしい。

 

「今日は夜も遅いし、ここに泊まろうか」

「……うん」

 

 じいちゃんの家から結構遠くに来ていたようで、ここに二人で一泊することに。

 炭治郎も今日の見回りはちょうど終わったようだ。

 

 二人で部屋に案内されて、俺達は布団を敷いてその上に向かい合って座る。

 

「それで……なんで、炭治郎は鬼なんだ?」

「うん……長くなるけど、いい?」

「ああ、大丈夫」

 

 それから、炭治郎の話を聞いた。

 

 山奥で家族7人で慎ましく暮らしていたところに……鬼が来た。

 

 しかもただの鬼じゃなく、鬼の始祖である鬼舞辻無惨が。

 

(うぅ……本当に、聞いちゃいけないことを聞いてるかも)

 

 鬼の始祖である鬼舞辻無惨が家に来たら……確実に、全員死んでしまうだろう。

 炭治郎は奇跡的に生き残って……いや、鬼になって生き残ったのか。

 

 炭治郎からは、そこまで悲しい音がしない。

 だけどそれは悲しくも、慣れてしまったからかもしれない。

 

「それで、そいつを撃退して」

「……えっ? 撃退?」

「えっ? うん、撃退したんだ。俺の家に入ってこさせないように、斧で」

「ちょっと待って。鬼の始祖を撃退? 斧で? そんなに弱かったの?」

「いや……言っちゃ悪いが、俺以外の柱だったら一人じゃ無理だと思う」

「なんで炭治郎出来てるの? その頃はまだ鬼殺隊に入ってないでしょ?」

「うん。だけど俺、小さい頃から全集中の呼吸を無意識にやっていたから。それで他の人よりも動けたんだ」

「動けた、っていう程度じゃないと思うけど!?」

 

 まさか悲しい音をさせていなかったのは、家族を一人も失わずに守れていたからだったとは……。

 

 しかも撃退の際に、頸を切ったようで、鬼舞辻無惨が頸の弱点を克服していることもわかったという。

 

「……とんでもねぇ炭治郎だ」

 

 思わず呟いてしまった。

 

 だけどその時に、鬼舞辻無惨の血が炭治郎に入ってしまったらしく、三日間眠り続けて鬼になった。

 

 そして起きた時にはすでに人喰いの衝動はなく、太陽も克服していたようだ。

 

「とんでもねえ炭治郎だ!!」

 

 思わず叫んでしまった。

 

 それから鬼殺隊に見つかって、柱合会議になって……その会議の前に、上弦の弐を倒して……。

 

「えっ、さらっと言ったけど、上弦の弐って、鬼の中でも上から二番目に強いやつだよね?」

「そうだね。花柱の人が襲われてたから、倒しちゃった」

「……と、と、とんでもねぇ炭治郎だ」

 

 思わずそう言ったが、本当にとんでもないな、炭治郎。

 

 柱合会議では一悶着あったらしいけど、それ以降は花柱の代わりに日柱となって、鬼殺隊最強の柱を務めていると……。

 

「俺が鬼になった理由は、こんな感じだね」

 

 そう言って苦笑する炭治郎。

 

 全部聞いた感想は……。

 

「鬼になった理由というよりも、それ以外がすごくてなんかもう、すごい」

 

 おそらく炭治郎以外だったら、鬼になったらダメなんだろう。

 

 炭治郎は三日間寝ただけで人を喰わなくてもよくなって、太陽の光も克服してしまった。

 

 前にじいちゃんに聞いたが、鬼舞辻無惨は1000年も生きていて、それで太陽を克服したいそうだ。

 1000年も生きていて太陽を克服していないのに、炭治郎はわずか三日。

 

 どういうこと? すごすぎでしょ。

 

 だけど炭治郎が鬼になった理由はわかった。

 身体の奥底にある怖い音は、やはり鬼の音だった。

 

「その……善逸は、俺が怖いか?」

「えっ?」

「さっき、俺が鬼だって気づいた時……逃げただろう?」

「あっ、いや、あれは……」

「わかってる。あれが普通の反応なんだ。最近、あまりそういう反応をされてなかったから、少し傷ついただけなんだ。善逸が悪いわけじゃないから」

「ねえ、わかって言ってる? 俺の罪悪感がすごいことになるの、わかって言ってるでしょ?」

 

 炭治郎は「?」というように首を傾げた。

 

 多分鬼になっても……炭治郎は炭治郎なんだろう。

 

「さっきは……俺が悪かったよ。逃げてごめん」

「ううん、さっきも言ったけど、それが普通の反応だから」

「だけど炭治郎……悲しかっただろう」

「っ! それは……」

「誤魔化さなくていいよ。俺は聞こえるからさ」

 

 炭治郎は多分、あまり自分が鬼だっていう自覚がないんだ。

 さっきの話を聞いてる限り、眠って起きたら鬼になっていたっていうことだし。

 

 しかもその後も、人間の時と同じように暮らしている。

 

 だから鬼だとわかられて、怖がられることに慣れてないんだ。

 

「もう怖くないから。炭治郎が鬼だったとしても、炭治郎は炭治郎だから」

「っ……ありがとう、善逸!」

 

 そう言ってニッコリと笑う炭治郎に、俺はドキッとする。

 な、なんだ今の、可愛い女の子を見たときのように、心臓が跳ねた……!

 

 お、俺は女の子が好きなんだ!

 炭治郎が好きなわけじゃ……! いや、人として、友達としては好きだけどさ!

 

「そういえば、善逸はなんであの家を出てここまで来てたんだ? こんな夜遅くに」

「へえぁ!? あ、ああ……それね……」

 

 変な考え事をしていた最中に話しかけられたので驚いたが、その質問に頭が冷えていく。

 

 炭治郎の話を聞くと、なんだか情けなくなってくる。

 鬼舞辻無惨を撃退し、鬼になっても人喰い衝動に襲われず、太陽を克服し、そして上弦の弐を単独で撃破。

 

 その後も鬼の身でありながら、鬼殺隊の最強の柱として頑張ってる。

 しかも年齢は俺の一個下らしいし。

 

「俺は、その……あの家から逃げてきたんだ」

「逃げた? なんで?」

 

 純粋な質問をしてくるが、俺の答えは決まっている。

 

「鍛錬が厳しいからに決まってるからだろぉ!! 死ぬから!! 絶対に俺死んじゃうから!!」

「善逸は生きてるだろ? それに、死ぬなんて簡単に言っちゃダメだ!」

「ど正論! やめて!! 俺傷ついちゃうから!!」

 

 そう、逃げてきた。

 鍛錬が厳しくて、辛くて、死んじゃうから。

 

 だけど……今日は、いつもと違った。

 

「……善逸、どうしたんだ? 悲しい、寂しい匂いがするぞ」

「えっ……匂い?」

「ああ、俺は人間の頃から鼻が良くて、人の気持ちが匂いでわかるんだ」

「そう、なんだ」

 

 俺の耳みたいなものか。

 それで炭治郎は、俺が悲しんでいる、寂しがっていることがわかったのか。

 

「……俺、いつも逃げるんだけど、いつもじいちゃんに捕まってたんだ。だけど今日は、逃げ出せた。いつも夜に逃げようとしても、絶対に逃げ出せないのに。最初は嬉しかったけど……今考えると、じいちゃんに見限られたのかも、って思ったんだ」

「……なんで?」

「だって、今日、兄貴がずっと出来なかった壱の型を出来るようになった。今まで兄貴は壱の型だけが出来なくて、俺は壱の型だけが出来る。それでじいちゃんに、お互いが出来ないところを支え合って、後継者になれって言われてたんだ。だけど、兄貴が壱の型が出来るようになったから……弱い俺のことが、いらなくなったのかもって……」

 

 ああ、言ってて、すごく泣きそうになってきた。

 

 やっぱり俺は、人に愛されない星のもとに生まれたのかな。

 

「善逸、それは違うよ。桑島さんは、絶対に善逸を見捨てたりしない」

「……どうしてわかるんだよ」

「桑島さんは、善逸のことが大好きだから。善逸だって、桑島さんのこと好きだろ?」

「……うん」

「それに善逸は、弱くないよ」

「……弱いよ、俺なんて」

「弱くないぞ。善逸は壱の型を極められる身体を持ってるから」

「なんでそんなのわかるんだよ」

「見えるから、俺は。身体が透けて見えるんだ」

「身体が、透けて見える?」

 

 なにそれ、どういうこと?

 

「善逸の足の筋肉は、すごい可能性を秘めている。多分、全一が成長すれば、俺でも速さは勝てないよ」

「は、柱の炭治郎に勝てるわけないだろ……」

「嘘じゃないよ。善逸は、鬼殺隊で最速になれる」

「……」

 

 炭治郎からは、全く嘘の音が聞こえない。

 それはつまり、鬼殺隊最強の炭治郎が、俺が最速になれると本気で思っているということだ。

 

「さっき善逸を助けた時の技、実は善逸の『霹靂一閃』から発想を得て作った技なんだ」

「えっ!? そうなの!?」

「ああ、ヒノカミ神楽のどの技よりも速くなった。だけど、善逸の技よりも全然遅かった」

「……」

「だから善逸は、とても強いんだぞ」

 

 俺が、最速に……強く、なれる。

 その言葉に、俺はとても勇気づけられた。

 

 日柱の炭治郎に言われる言葉が、響いた。

 

「……わかった、炭治郎。俺、もう一回じいちゃんと話してみる」

「うん、それがいいと思う」

「そ、その……ありがとう」

「ううん、俺の方こそありがとう。俺を怖がらないでくれて」

 

 俺と炭治郎は顔を見合わせて、笑った。

 

 そうして俺達は……友達になったんだ。

 

「そういえば炭治郎、いつ俺の霹靂一閃を見たんだ? 今日、俺やった覚えないんだけど……」

「やってたじゃないか。一度倒れてから、急に立ち上がって……」

「えっ、なにそれ?」

「……えっ?」

 

 ◇  ◇  ◇

 

 その後、俺と炭治郎が寝ようとした時……。

 

「ここかぁ!! 善逸ぅ!!」

 

 藤の花の家紋が飾ってるこの家に、そんな声が響いてきた。

 寝ようとして横になっていたが、ビクッとして起き上がる。

 

「ひぇ……! こ、この声、じいちゃんの声だ……!」

 

 じいちゃんが俺を追って、ここまで来たの……!?

 ど、どうやって、ここがバレたの!?

 

「あー……ごめん、善逸。さっきここに着く前に、桑島さんに鎹鴉を送ってたんだ」

「炭治郎ぉぉぉぉ!!」

 

 炭治郎に裏切られていたとは……!!

 

「だけど、善逸……ちゃんと、桑島さんは追ってきたじゃないか」

「うっ……そ、そうだけど」

「多分、鎹鴉を送ってここに来るまでの時間を考えれば、届いた瞬間から走ってここまで来たんだと思うよ」

「うぅ……!」

 

 そう言われると、喜んでしまうが……!

 だけど、逃げたのがバレて追ってこられるのは恐ろしい……!

 

「善逸!!」

「ギャァァァ!!」

 

 戸が開いて、じいちゃんが目の前に現れた。

 

「……竈門さん、この馬鹿を保護してもらって礼を言う」

「いえ、大丈夫です。俺は、席を外しますね」

「ちょ……!!」

 

 炭治郎がそう言って、部屋を出て行ってしまう。

 あいつ、裏切ってそのまま俺を置いて行きやがった……!

 とんでもねぇ炭治郎だ……!!

 

「善逸」

「は、はいぃ!!??」

 

 じいちゃんは俺に近づいて、拳を振り上げて殴る……!

 と、思いきや……俺の両肩を強く掴んできた。

 

「へ……?」

「無事でよかったぞ、善逸……!」

「な、なんで……?」

「お前、鬼に襲われたって聞いたぞ! 怪我はないのか!?」

 

 あっ……心配、してくれたんだ。

 

「う、うん、大丈夫……炭治郎に、助けてもらったから……」

 

 俺は泣きそうになりながらそう言った。

 正面から俺の顔を見ていたじいちゃんは、俺の言葉を聞くとほっと息をついた。

 

「馬鹿者……こんな夜中に抜け出すからじゃ」

「うん……ごめん……」

 

 じいちゃんが本気で心配してくれたというのが伝わってきて、とても嬉しかった。

 

「……じいちゃん、俺、強くなれるかな?」

 

 炭治郎に「強くなれる」って言われたけど、それでも俺は……じいちゃんの口から、聞きたい。

 

 俺の前向きな言葉に驚いたのか、目を丸くしてから……じいちゃんは、ニッと笑って言った。

 

「もちろんじゃ。お前は儂の弟子で、誇りなのじゃから」

「っ……!」

 

 その言葉に、俺は涙流してしまった。

 

「俺、頑張るよ……これからも、逃げるかもしれないけど……絶対に、諦めないからさ……」

「ああ、泣いてもいい、逃げてもいい。ただ諦めるな。お前は、雷の呼吸を極められる」

 

 そう言って俺の頭を強く撫でるじいちゃん。

 

 撫で方は荒く、頭はグラングラン揺れたが……なんだか、温かかった。

 

 

 


 

 

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