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ライトノベル作家のshiryuです。鬼滅の刃のSSを書きました。鬼化炭治郎で、とても最強です。ぜひご覧ください。…

 

 


 

 

 

炭治郎が柱になってから、数ヶ月ほど経った。

 

お館様から屋敷をいただいて、家族みんなで暮らしている。

 

蝶屋敷に近いので、いつも炭治郎の家族は蝶屋敷のお手伝いをしていた。

 

そして炭治郎も、昼間の時はよく一緒に手伝いをする。

蝶屋敷は女手ばかりで、少しでも男手が必要であった。

 

それに炭治郎は柱になるほどの力を持っているので、文字通り百人力だ。

 

「いつもありがとうね、炭治郎君」

「いえ、カナエさん達にはお世話になってますから!」

「ふふっ、私達の方こそ、竈門家の皆さんにはお世話になってるわよ」

 

竈門家は全員優しく、そして人当たりがいい。

看護師としてとても優れた人達だ。

 

蝶屋敷に来る隊士達は、竈門葵枝、禰豆子、花子、それぞれ誰がいいかなど話し合っているなど聞く。

 

一番人気があるのは、竈門葵枝。

……やはり、家族を失って鬼殺隊に入る者が多いので、母親の温かさを持っている葵枝は男女問わず人気であった。

 

もちろん女性隊士には、炭治郎や竹雄、茂も人気だ。

とても可愛い、癒されるということで。

 

炭治郎は最年少の柱、ということで有名で、どんな柱なのか気になる人が多い。

そして接した隊士達が揃えて口に言うのは、「とても良い子である」と。

 

最年少で柱になるのだから、どんな化け物かと思いきや、年相応の良い子であった。

竈門家の男性の中で一番人気があるのは、柱ということもあって炭治郎だ。

 

柱の男性の中で、一番接しやすく可愛いという理由で。

 

「カナエさん、俺は後で仕事に行くので、今日はもう手伝えません。ごめんなさい」

「あら、そうなの? いいのよ、お仕事なんだから。だけど、こんな昼間からお仕事って、なんなのかしら?」

 

カナエがそう聞くと、もうすでに仕事の内容を知っている炭治郎は答える。

 

「将来有望な鬼殺隊士を、引き入れて欲しいとのことらしいです」

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

ある春の日のこと。

 

いつも通り……いや、去年から兄と二人で山の中暮らしていた。

僕達が住んでいる山小屋に、ある女性と――僕達と同い年頃の少年が現れた。

 

女性はとても美しく、あまりの美しさに僕は初め、白樺の木の精だと思った。

 

「お初にお目にかかります。私、鬼殺隊当主、産屋敷輝哉の妻、産屋敷あまねと申します。時透様、でよろしいでしょうか?」

 

その声も美しく、凛として透き通った声であった。

 

「は、はい、時透は僕達のことですが……」

 

僕はその女性も気になったが、隣にいる人も気になっていた。

 

僕達と同い年くらいの容姿で、額に痣がある。

とても優しい笑みを浮かべ、赤いその瞳は――死んだ父さんを、思い出す。

 

そして二人を家の中へ案内し、兄さんと一緒に話を聞いた。

 

この世の中には、鬼と呼ばれる化け物がいる。

それを倒している組織が、鬼殺隊。

 

産屋敷あまねさんの隣にいる僕達と歳が変わらなそうな少年は、鬼殺隊で柱という地位についている竈門炭治郎さん。

見た目じゃ全くわからないけど、とても強いらしい。

 

そんな鬼殺隊という組織の当主の御内儀さんと、柱の方が僕達に何の用なのか。

 

「貴方方は、鬼殺隊で最強の剣士の、その血筋の方です」

「最強の剣士の、血筋……?」

「はい。300年以上も前の剣士ですが、その方の血族が貴方方です」

 

この時代は、そういう血筋を大事にすることが多いと聞いていた。

一番最初の呼吸っていう技を作った、剣士の子孫。

それが僕達らしい。

 

だけど僕達がそんな最強の血筋と聞いても、すぐには理解出来なかった。

 

「それで、僕達がそんな血筋だからってなんだよ」

 

兄さんがいつものように不機嫌な声で、あまねさんと炭治郎さんに言う。

 

「まさか僕達に、そんな化け物と戦えっていうのか? ただ最強の血筋を引き継いでるっていう嘘か本当かわからない理由で、見知らぬ誰かを助けるために命を賭けろって!?」

「兄さん、そんな酷いことを言っちゃ……!」

「お前は黙ってろ! 無一郎!」

 

突然の兄さんの大声に、僕は身体を震わせて黙ってしまう。

 

「何を企んでいるんだ!? お前らみたいな奴らに、俺達は利用されてたまるか!」

「何も企んでおりません。ただ私達は……」

「うるさい! 出ていけ! お前らと話すことなんて何もない!」

 

さすがにその兄さんの言い草に、僕は口を出す。

 

「兄さん、そんな言うことないでしょ。それにこの話が本当だったら、僕たちは人の役に立つことが出来るかもしれないし……」

「お前に何ができるっていうんだよ!」

「っ……!」

 

その言葉に、僕は何も言い返せなかった。

 

「米も一人で炊けないような奴が剣士になる? 人を助ける? 馬鹿も休み休み言えよ! 本当にお前は父さんと母さんにそっくりだな!」

 

父さんと、母さん。

 

母さんは具合が悪いのにそれを言わないで働いて、風邪をこじらせ肺炎で死んでしまった。

父さんは母さんを治すために、嵐の日に薬草を取りに行って、崖から落ちて死んだ。

 

「人を助けることなんてな、選ばれた人間にしかできないんだ! 先祖が剣士だったからって、子供の俺たちに何ができる!?」

 

厳しい言葉だが、僕は何も言い返せない。

兄さんの言う通り、一人で生きられない僕たちが、人を救うなんて無理なのかもしれない……。

 

「無一郎の無は、『無能』の『無』! 無一郎の無は、『無意味』の『無』! 楽観的すぎるんだよ!」

 

何も……そこまで言わなくていいじゃないか……。

 

僕は人前にもかかわらず、涙が溢れるのを我慢できなかった――。

 

「有一郎くん、嘘はダメだよ」

 

その言葉は、父さんと同じ瞳を持った炭治郎さんが放ったもの。

 

「……何が嘘だって?」

 

兄さんはイライラしながらも、炭治郎さんを見た。

 

「君から嘘の匂い、それに心配している匂いがするよ」

「匂い? 何の話だ?」

「無一郎くんが、心配なんだね」

「……は?」

 

炭治郎さんの言葉に、意味がわからないと言うように兄さんが言葉を漏らした。

僕もわからなかった。

 

兄さんが、僕を心配してる?

 

「鬼殺隊というところがどれだけ危ないかを理解していて、それで無一郎くんが危ない目に遭わないように、入らせたくないんだよね」

「なっ……!?」

「えっ……」

 

炭治郎さんの言葉に、僕は目を丸くした。

 

兄さんが、そんなことを思って……。

 

兄さんを見ると、とても慌てたように、だけど少し恥ずかしそうに顔を赤らめていた。

 

「そ、そんなわけ……!」

「だけどダメだよ。心配なら、心配だって正直に言わないと。今の言い方だと、有一郎くんのことが誤解されちゃうから」

「っ……!」

 

兄さんは炭治郎さんの言葉に、何も言い返せない。

 

本当に、兄さんが僕のことを心配してくれて、言ってくれていたの……?

 

「無一郎くんの名前の意味も、嘘だよね? ずっと嘘の匂いと、君が傷ついてる匂いがしていたよ。嘘を言って傷つくんだったら、言わない方がいいよ、有一郎くん」

「っ……! お前に、何がわかるんだよっ!!」

 

兄さんはまた大声を出して、炭治郎さんに言い返す。

 

だけど……言い返す内容は、さっきとは別物だった。

 

「父さんと母さんが、善良な人達だった! それなのに死んだ! どれだけ善良に生きたって、神様や仏様は結局守ってくれない! だったら――俺が守るしかないだろう!!」

「っ! 兄さん……!!」

 

兄さんは涙ぐみながらそう叫んだ。

 

初めて知った、兄さんの気持ち。

そんなことを、思っていたなんて……!

 

「……御内儀様、今日は帰りましょう。有一郎くんと無一郎くんには、お互いに理解をする時間が必要みたいです」

「……そうですね。有一郎様、無一郎様、本日はお時間頂戴しありがとうございます。またお話をしに伺いたいと思います」

 

僕たちのことを気遣うように、あまねさんと炭治郎さんは帰ってくれた。

 

帰る際、炭治郎さんが……。

 

「二人とも、鬼殺隊に入りたくないんだったら、入らなくてもいい。だけど、たった二人の兄弟なんだから。仲良くしてね」

 

そう言って、父さんと似た目を細めるように笑って、帰っていった。

 

「……兄さん」

 

二人だけになってしばらく時間が経って、僕は兄さんに話しかける。

 

「……なんだ」

「その、ごめん……僕、勝手なこと言って……」

「……俺たちが剣士になっても、無駄死になるだけだ」

「だけど……!」

「うるさい! 黙れ! さっさと晩飯の仕度をしろ!」

「あっ……」

 

兄さんはそう言って、米を炊くために木の枝を拾いに行った。

 

その後も、僕は人を救うために剣士になりたくて……兄さんに何度も話をかけた。

 

だけどその度に、

 

「お前には無理だ、選ばれた人間しかできないんだよ」

「剣士になっても犬死するだけだ」

 

と言って、許してくれなかった。

 

だけどそれが、僕を心配してくれていると思うと……僕も、強くは言えなかった。

 

あまねさんと炭治郎さんが来た日から、数日が経ち――僕達は、運命の日に出会った。

 

その日は蒸し暑く、夜に戸を開けて寝ていた。

 

不幸にもその時……鬼が来てしまった。

 

兄さんの悲鳴を聞いて、僕は飛び上がるように起きた。

目の前で、兄さんの腕が引き裂かれるのを見た。

 

「ぐっ! あああぁぁぁ……!!」

「兄さん! 兄さんっ!!」

 

痛みに悶えている兄さんを抱きしめ引き寄せる。

 

腕が……! 兄さんの腕が……!

 

「うるせぇうるせぇ騒ぐな」

 

兄さんの腕引き裂いた鬼が、ウザったそうな声で言う。

 

「どうせお前らみたいな貧乏な木こりは、何の役にも立たないだろ。いてもいなくても変わらないような、つまらねぇ命なんだからよ」

 

その言葉に、僕は目の前が真っ赤になるのを感じた。

 

生まれてから一度も味わったことのない。

腹の底から吹きこぼれでるような、激しい怒りだった。

 

その怒りに身を任せる――そうしようとしたの、だが。

 

「お前の方こそ、黙るんだ」

 

静かな、だけど怒りが篭った声が響いた。

 

いつの間に来ていたのか、鬼の後ろには炭治郎さんがいた。

僕も、兄さんも、鬼も気づかなかった。

 

「なっ!? お前、いつの間に……!?」

 

鬼が振り返ろうとしたその時……僕は、生まれてから見たものの中で、一番美しいものを見た。

 

「ヒノカミ神楽――斜陽転身」

 

炭治郎さんが空中で宙返りしながら、いつ抜いたかもわからない刀で鬼の頸を斬った。

いや、斬ったのは見えなかった。

 

僕に見えたのはとても美しい、太陽だった。

 

鬼は斬られてすぐに、何も言う暇もなく灰となって消えていった。

 

その美しい太陽にしばらく見惚れていたのだが、兄さんの呻き声でハッとする。

 

「兄さん、大丈夫!? 兄さん……!」

 

兄さんの残った左手を握り、必死に話しかける。

 

兄さんは意識が朦朧としているのか、炭治郎さんのことを見上げていた。

おそらく兄さんも、さっきの炭治郎さんの攻撃を見たのだろう。

 

「神、様……」

 

意識が朦朧としながらも、兄さんは言葉を紡ぐ。

 

「悪いのは、俺だけです……バチが当たるのは、俺だけで……」

「兄さん、何言ってるんだよ……!」

「俺が、邪魔をしたから……無一郎の願いを……人の役に立ちたいというのを……」

 

兄さんは鬼が襲ってきたのを、自分のせいだと思っているようだ。

そんなわけないのに……。

 

「わかっていたんだ……本当は、無一郎の無は……『無限』の『無』なんだ」

「っ! 兄さん……!」

「自分ではない誰かのために……無限の力を出せる――選ばれた人間なんだ」

 

僕は涙が止まらなかった。

 

兄さんが、僕のことをそんなに思ってくれていたなんて。

 

僕は兄さんを強く抱きしめながら、炭治郎さんを見上げる。

 

「炭治郎さん! 兄さんを……! 兄さんを、助けてください……!」

「もちろん、助けるよ。絶対に死なせないから」

 

炭治郎さんは強くそう言い切り、僕達の側に座る。

兄さんの千切れた腕を持って、断面をくっつくかくっつかないかぐらいの距離で持っていた。

 

そして……。

 

「血鬼術――陽光癒」

 

炭治郎さんがそう言うと、優しい光が兄さんの左腕を包み込んだ。

 

優しい日差しのような、とても気持ちがいい光だ。

 

しばらくその光が出続け、収まった時には……信じられないことに、兄さんの左腕は繋がっていた。

 

兄さんは自分の繋がった腕を目を丸くして見て……そして力を失ったように、目を閉じた。

 

「兄さん!」

「大丈夫、気を失っただけだ。少し血を失いすぎてるから、すぐに蝶屋敷、治療できる場所に連れていこう」

「お願いします……!」

「うん。有一郎くんを横抱きにして運ぶから、無一郎くんは俺の背中に乗って」

「えっ? 二人も運ぶなんて……」

「大丈夫、一人も二人も変わらないよ。急ごう」

 

そう言って炭治郎さんは気絶した兄さんを横抱きにして、軽々と持ち上げる。

 

僕も恐る恐る背中に捕まるように乗った。

 

「しっかり掴まっててね。振り落とされないように」

「は、はい!」

 

そして……僕はあまりの速さに、気を失いそうになってしまった。

 

だけどその速さのお陰で兄さんは助かり、左腕が千切れたにも関わらず五体満足。

後遺症も何も残らなかった。

 

◇  ◇  ◇

 

 

俺は、神様を見た。

 

父さんと母さんが死んだ時には現れてくれなかった。

仏様も、神様も。

 

だけど、俺と無一郎が鬼に襲われた時に、来てくれた。

 

――太陽の、神だ。

 

太陽の神が、鬼を倒してくれた。

 

だけど神様でも、腕が切られて血を流しすぎた俺を助けられはしないだろう。

 

だから俺は、必死に頼み込む。

 

せめて、無一郎だけでも。

 

無一郎が俺を抱きしめいるのはわかる。

大丈夫なのか、無一郎。

お前は傷ついていないか?

どこにも、怪我はないか?

 

俺のことはいいから、お前は助かってほしいんだ。

 

無一郎はたった一人の弟で……俺が、兄なんだから。

 

ごめんな、無一郎。

冷たい態度ばっかり取って。

 

いつも俺には、余裕がなかった。

人に優しくできるのも、やっぱり選ばれた人だけなんだよな。

 

神様……どうか、無一郎だけは、お助けください……。

 

 

――そう願って口にしていたのを、無一郎に聞かれていた。

そして俺は、神様だと勘違いしていたが、炭治郎さんに救ってもらった。

 

俺がこの時に口走った言葉で、後々とても恥ずかしい思いをすることを、俺は知る由もない。

 

 

 


 

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ライトノベル作家のshiryuです。鬼滅の刃のSSを書きました。炭治郎がもしも最初から最強だったら、というものです。鬼化…

 

 

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